「暗号資産(仮想通貨)の利益が20万円以下なら申告しなくていい」と思い込んでいないでしょうか。実はこのルールは所得税の話であり、住民税には別の申告義務が残ります。この記事では、あなたの立場(会社員・学生・扶養内・副業あり)ごとに「いくらから」課税・申告の対象になるのかを整理し、見落とされがちな住民税の扱いまで解説します。
執筆:CoinTradeコラム編集部
※本記事は2026年9月2日時点の情報であり、今後の法改正等により相違が生じることがあります。個別の税務判断については、税理士や所轄の税務署・市区町村へご確認ください。
所得税と住民税の基本ルール
暗号資産(仮想通貨)の利益に税金がかかるかどうかは、いくら儲けたかだけでなく、所得税と住民税のどちらの話をしているかによって基準が変わります。まずは基本となる所得税のルールと、見落とされがちな住民税の扱いを順に整理しましょう。
所得税は雑所得が年間20万円を超えると申告が必要
会社員など給与所得者の場合、勤務先で年末調整を受けていれば、暗号資産の利益を含む給与以外の所得の合計が年間20万円を超えたときに、所得税の確定申告が必要になります。
この「20万円」は、暗号資産を売った金額そのものではなく、取得価格などの必要経費を差し引いた後の利益で判定されることに注意が必要です。
給与を2か所以上から受け取っている場合や、給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合は、この基準がそもそも適用されません。詳しい条件は後述の例外ケースで解説します。
住民税には20万円以下の申告不要ルールがない
税務署に所得税の確定申告書を提出した人は、その情報が市区町村に送られるため、住民税の申告は原則不要になります。
一方、所得税の確定申告をしなかった人は、住民税の申告義務が別途残るため、原則としてお住まいの市区町村への住民税の申告が必要になります。
このように、「所得税の申告が要らない」からといって「税金関連の手続きが何もいらない」というわけではないため注意してください。
暗号資産の税金はいくらからかかる?立場別の早見表
ここからは、20万円ルールの基準を「会社員」「学生・扶養に入っている人」「副業がある人」という3つの立場に分けて具体的に確認します。
| 立場 | 所得税の |
|---|---|
| 会社員 | 給与以外の |
| 学生 |
合計所得金額が |
| 副業あり | 暗号資産の |
※どの立場でも、所得税の申告が不要な場合でも住民税の申告は原則として必要です。また、学生・扶養内の場合は合計所得金額が58万円を超えると扶養控除の対象から外れる可能性もあります。
会社員(給与所得者)は雑所得20万円超で申告
勤務先で年末調整を受けている会社員は、暗号資産の利益を含む給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。
20万円以下であれば所得税の確定申告は原則として不要ですが、前述のとおり住民税の申告は別途必要になる点は変わりません。
学生・扶養に入っている場合は基準が変わる
給与所得がなく、暗号資産の利益(雑所得)だけが収入である学生や専業主婦(夫)の場合は、基準が20万円から基礎控除額に変わります。
現在の基礎控除は所得の区分に応じて58万円から95万円の間で決まっており、本人の暗号資産の利益がこの基礎控除額を超えなければ、所得税は原則としてかからず、確定申告も基本的に不要です。
また、親や配偶者の扶養控除の対象になれるかどうかは、本人の申告要否とは別の基準で判定され、合計所得金額の要件は令和7年分以後58万円以下に引き上げられています。
本人の所得税はかからなくても、暗号資産の利益が58万円を超えると扶養から外れる可能性があるため、注意してください。
副業がある場合は他の所得と合算して判定する
給与所得者が副業を行っている場合、暗号資産の利益は副業の所得など、給与以外の他の所得と合算した金額で20万円の判定を行います。
暗号資産の利益だけを見れば20万円以下でも、他の副業所得と合わせて20万円を超えれば所得税の確定申告が必要になるので注意が必要です。
早見表だけでは判断できない例外ケース
ここまでの早見表に当てはまらない、注意したい例外を紹介します。
個人事業主・フリーランスは20万円ルールの対象外
所得税の確定申告が原則不要となる制度は、給与所得者を対象にした特例であり、給与所得のない個人事業主やフリーランスには適用されません。
個人事業主は、事業所得などについてもともと確定申告を行う立場のため、暗号資産の利益(雑所得)も含めて申告する必要があります。「利益が20万円以下だから申告しなくていい」という考え方は、個人事業主には当てはまりません。
給与収入2,000万円超は金額にかかわらず申告が必要
給与等の年間収入金額が2,000万円を超える人は、そもそも年末調整の対象外となります。
20万円以下の申告不要制度は年末調整を受けていることが前提のため、給与収入が2,000万円を超える人はこの制度の対象外になることに注意してください。
したがって、暗号資産の利益の金額にかかわらず、所得税の確定申告が必要です。
申告しなかった場合に起こること
最後に、申告をしないまま放置した場合に何が起こるのかを、所得税と住民税に分けて確認します。
所得税を無申告のままにした場合のペナルティ
所得税を期限後に無申告のままにすると、本来の税額に加えて「無申告加算税」が課されます。税率は、申告のタイミングに応じて次のように変わります。
- 税務署からの調査通知前に自主的に申告した場合:一律5%
- 調査通知後、実際の調査前に自主的に申告した場合:納付税額に応じて10%〜25%
- 税務調査を受けてから申告した場合:納付税額に応じて15%〜30%(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する分は、納付税額300万円を超える部分の税率が30%に引き上げられている)
これに加えて延滞税もかかり、令和8年分は納期限の翌日から2か月を経過する日までが年2.8%、それ以降は年9.1%です。
住民税を無申告のままにした場合のリスク
住民税にも地方税法に基づく延滞金の制度があり、期限までに申告・納付をしないと延滞金が発生する場合があります。延滞金の割合や運用の詳細は自治体ごとの条例で定められているため、正確な金額は居住地の市区町村へ確認するのが確実です。
また、住民税の申告漏れは、国民健康保険料の軽減判定や、課税証明書・非課税証明書の発行にも影響することがあります。
「所得税の申告が不要だったから住民税も大丈夫」という思い込みが、こうした見落としにつながりやすいので注意しましょう。
よくある質問
Q20万円ルールの「20万円」は利益と収入のどちらで判定しますか?
判定に使うのは、暗号資産を売った金額(収入)そのものではなく、取得費や手数料などの必要経費を差し引いた後の利益(所得金額)です。まだ売却していない保有中の値上がり分(含み益)は対象に含まれません。
Q学生・扶養に入っている場合、よく聞く「103万円の壁」は暗号資産の利益にもそのまま当てはまりますか?
当てはまりません。103万円という数字は、給与収入にだけ適用される給与所得控除を加味した金額です。暗号資産の利益のような雑所得には給与所得控除がないため、暗号資産の利益だけが収入の場合は、基礎控除額(令和7年分・令和8年分は合計所得金額に応じて58万円から95万円)が申告要否の基準になります。
Q複数の取引所を使っている場合、20万円はどう判定しますか?
一つの取引所の損益だけでなく、利用している全ての取引所の損益を合算した所得金額で判定します。ある取引所で利益、別の取引所で損失が出た場合も、暗号資産の雑所得としてまとめて計算します。
Q住民税の申告はどこで、いつまでに行えばよいですか?
お住まいの市区町村の窓口へ、原則として所得税の確定申告と同じ時期(例年2月中旬から3月15日ごろ)までに提出します。所得税の確定申告をした場合は、その情報が市区町村へ送られるため、住民税の申告を別途行う必要はありません。
QNISAのように暗号資産(仮想通貨)の利益が非課税になる制度はありますか?
2026年時点で、暗号資産の利益をNISAのように非課税にする制度はありません。将来的に株式と同様の申告分離課税へ移行する見通しが示されていますが、税率が変わるだけで非課税になるわけではない点に注意が必要です。
まとめ
- 所得税の20万円ルールは給与所得者向けの特例であり、暗号資産の利益(雑所得)が20万円を超えると確定申告が必要になる
- 住民税には20万円以下の申告不要ルールがなく、所得税の申告をしない場合でも住民税の申告は別途必要である
- 学生・扶養に入っている場合は、令和7年度改正後の基礎控除額(最大95万円)と扶養控除の対象要件(58万円)という2つの基準を区別する必要がある
- 個人事業主や給与収入2,000万円超の給与所得者には、20万円ルールがそもそも適用されない
- 所得税・住民税ともに無申告のままにすると、加算税・延滞税・延滞金が発生し得る
- 早見表で自分の立場の基準を確認し、不明点は最新の国税庁情報や自治体窓口で確認するのが望ましい