「Web3」という言葉は、2021〜2022年頃には次世代のインターネットとして大きく取り上げられ、最近は以前ほど見かけなくなったと感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、Web3の定義や生まれた思想的背景、これまでのインターネットとの違い、NFT・DeFi・ステーブルコインといった技術の現在地、暗号資産市場との関わりまでを解説します。
執筆:CoinTradeコラム編集部
※本記事は2026年7月29日時点の情報であり、今後の法改正等により相違が生じることがあります。
Web3の定義と生まれた背景
分散型インターネットという考え方
Web3とは、ブロックチェーン技術を使って、特定の企業やプラットフォームに頼らずに個人がデータやデジタル資産を所有・管理できることを目指すインターネットの考え方です。これまでのインターネットでは大手IT企業がユーザーの情報を一括して管理する仕組みが主流でしたが、Web3ではブロックチェーン上に記録された情報を個人自身が管理できるとされています。
「分散型インターネット」とも呼ばれ、特定の管理者を介さずに個人同士が直接やり取りできる点は、これまでのインターネットにはなかった特徴かもしれません。
提唱者とその時代背景
「Web3」という言葉は、英国のコンピューター科学者で、暗号資産のイーサリアムにおいてCTO(最高技術責任者)を務めていたギャビン・ウッド氏が2014年に提唱したとされています。当時は、プライバシーの保護と非中央集権的な仕組みを重視する文脈で使われ始めた言葉でした。政府や大企業による情報の一元管理への懸念が広がりつつあった時期の社会的な空気を反映した名づけだったといえます。
これまでのインターネットとの違い
サイファーパンクという源流
インターネットの歴史をひもとくと、Web3の考え方は今に始まったものではなく、1990年代の思想運動にまでさかのぼることができます。当時、暗号技術を使って個人の自由やプライバシーを守ろうとする「サイファーパンク」と呼ばれる運動が生まれ、国家や企業に頼らない仕組みへの関心が広がっていました。
2008年の世界的な金融危機で中央集権的な金融機関への不信が高まったことを背景に、この流れをくむ形でビットコインが登場したと言われています。中央の管理者を置かない仕組みを目指す発想は、この時点ですでにWeb3の土台になっていました。
Web2.0が生んだ反発
2000年代に入ると、SNSや検索サービスなどWeb2.0と呼ばれるプラットフォームが広がり、誰もが手軽に情報を発信できるようになりました。その一方で、利用者が生み出すデータやコンテンツから得られる利益の多くは、プラットフォームを運営する企業に集中していく構造が生まれました。
こうした集中に対する利用者の不満は徐々に蓄積し、自分のデータや資産を自分自身で管理したいという要望につながっていきます。Web2.0の利便性と引き換えに失われたものへの反省が、次の変化を呼び込む土壌になったのです。
個人の主権を掲げるWeb3.0
サイファーパンクの思想やビットコインの登場、Web2.0への反発という流れの延長線上に位置づけられるのがWeb3.0です。Web3.0を提唱したギャビン・ウッド氏は、WIRED誌のインタビュー(2022年3月14日公開)で「Less Trust, More Truth(信頼に代わる真実を)」という考え方を語り、専制的な権威に頼るのではなくより合理的な仕組みへ移行することを目指していると述べています。個人の自由や自己決定を重んじる考え方は、こうした発言からもうかがえるでしょう。
Web3を支える技術的な仕組み
特定の管理者を介さない分散構造
Web3を技術的に支えているのが、P2P(ピアツーピア)と呼ばれる、コンピューター同士が対等な立場でつながる仕組みです。特定の管理者や中央サーバーを置かず、参加者同士が直接情報をやり取りできる点が大きな特徴です。銀行や大手プラットフォームのような仲介者が存在しない分、特定の企業の都合でサービスが停止したり、情報が一方的に管理されたりするリスクを抑えられる点は見逃せません。
書き換えが難しい記録の仕組み
Web3の基盤となるブロックチェーンは、取引などの記録を複数の参加者のコンピューターに分散して保存する技術です。一つの記録を書き換えるには、ネットワークに参加する多数のコンピューターのデータを同時に改ざんする必要があるため、難易度はかなり高くなります。こうした仕組みにより、特定の管理者がいなくても記録の信頼性を保てる点が、Web3を支える技術的な土台になっているのです。
参加者同士で検証できる透明性
ブロックチェーン上の取引記録は、ネットワークに参加する人であれば誰でも確認できる形で公開されています。この透明性の高さがなければ、仲介者を信頼する代わりに仕組みそのものを検証できるという、Web3らしい発想は成り立ちません。
ブームを経て実装が進む技術
NFT
NFT(非代替性トークン)は、2021〜2022年にデジタルアート作品が高額で取引されるなど大きな注目を集めましたが、その後の取引高はピーク比で8割ほど減少していると報じられています。投機的な売買を目的とした市場は縮小し、単独の事業として成立させるのが難しい状況です。
一方で、イベントのチケットに偽造・転売防止の機能を持たせたり、教育機関の修了証明を発行したりするなど、データの真正性を証明する実用的な用途での活用が広がってきました。ブームの縮小とあわせて、実装が地に足のついた段階に移りつつあるといえるでしょう。
DeFi
DeFi(分散型金融)は、銀行のような仲介者を介さずに、金融サービスを実現する仕組みです。
DeFiの広がりを下支えしてきたのが、特定の法定通貨と価値を連動させたステーブルコインでした。米連邦準備制度理事会のFEDS Notesによると、世界の流通残高は2026年4月時点で3,170億ドルに達し、2019年の30億ドルから6年で100倍を超える規模に拡大しており、新興国では国際送金や「ドルの代替」としての利用も広がっています。
国内では、2025年10月27日に円建てでは初めてとなるステーブルコイン「JPYC」の発行が始まっており、世界の流通規模にはまだ及ばないものの、Web3の決済インフラとしての実装が国内でも具体化し始めた段階です。
| 銘柄 | 発行体 | 連動する通貨 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| USDT | テザー社 | 米ドル | 新興国の |
| USDC | サークル社 | 米ドル | 機関投資家の |
| JPYC | JPYC株式会社 | 日本円 | 国内の |
Web3が持つメリットと課題
個人が得られる主なメリット
Web3のメリットとしてまず挙げられるのが、自分のデータや資産を、特定の企業に預けるのではなく自分自身で管理できるという点です。仲介者を介さないやり取りが増えれば、手数料などのコストが下がる可能性があることも期待されています。
残る課題とリスク
一方でWeb3には、特定の管理者がいないという特徴の裏返しとして、トラブルが起きた際の対応が自己責任になりやすいという課題があります。操作や仕組みを理解するのに一定の知識が必要な点も、一般への普及が緩やかなペースにとどまっている理由の一つです。
実際、日本ブロックチェーン協会(JBA)の調査でも、暗号資産の保有率は約4.5%とシンガポール(24.4%)や米国(15.5%)を大きく下回っており、取引履歴の確認や損益計算といった手続きの煩雑さが参入を妨げていると指摘されています(※1)。
Web3と暗号資産市場の展望
進む国内の制度整備
国内では、2025年12月19日に公表され同月26日に閣議決定された税制改正大綱で、暗号資産に関する課税方式の見直し方針が示されました(※2)。国内の登録業者を通じて取引する特定の暗号資産について、税率20.315%の申告分離課税へ移行し、損失を3年間繰り越して控除できる仕組みも導入される見込みで、2028年1月からの適用が想定されています。
暗号資産に関する制度改正の詳細は、金融庁の公式サイトで随時公表されています。今後の適用時期や対象範囲を確認する際に参考になります。
強まる金融資産としての性格
Web3はもともと、個人がデータや資産を自分で所有し、特定の管理者に頼らずに管理できることを目指す考え方でした。一方で、国内の税制改正の内容を見ると、暗号資産は株式や投資信託と同じように課税対象を整理する方向で扱われつつあり、非中央集権という理念以上に、金融資産としての性格が制度面で強まっているという実態がうかがえます。
総務省「令和6年版情報通信白書」に掲載されたA.T.カーニー社の調査では、Web3の世界市場規模は2021年を基準に2027年までに企業向けで約13〜67倍、消費者向けで2.4億ドル超(20倍超)に拡大すると予測されています(※3)。ただし、KPMGが2025年11月に公表したレポートでは、一般消費者への浸透はまだ限定的だと指摘されており、楽観的な予測どおりに進むとは限りません。
よくある質問
QWeb3という言葉はいつ、誰が提唱したのですか?
「Web3」という言葉は、イーサリアムのCTOを務めていた英国のギャビン・ウッド氏が2014年に提唱したことで知られています。プライバシーの保護と非中央集権的な仕組みを重視する文脈で使われ始めた言葉です。
QWeb3が目指す分散化の考え方はどこから生まれたのですか?
1990年代のサイファーパンクという思想運動や、2008年の金融危機を背景に登場したビットコインの流れをくむ考え方です。Web2.0のプラットフォームへの反発も、この考え方が広がる一因になりました。
QNFTやDeFiは今どのように活用されているのですか?
NFTは投機的な売買が縮小した一方、イベントチケットの偽造防止や証明書の発行といった実用的な用途で使われ始めています。DeFiもステーブルコインを中心として、全世界で利用が広がりつつあります。
QWeb3にはどのような課題やリスクがありますか?
特定の管理者がいないぶん、トラブルが起きた際の対応が自己責任になりやすい点が課題です。操作や仕組みの理解に一定の知識が必要で、一般への普及にはまだ時間がかかる状況です。
QWeb3は暗号資産市場にどのような影響を与えると考えられていますか?
Web3の多くのサービスは暗号資産の基盤の上で動いており、両者は切り離せない関係にあります。国内では暗号資産を金融商品として位置づける制度整備も進んでおり、今後の動向が注目されます。
まとめ
- Web3はブロックチェーンにより個人がデータや資産を所有・管理できることを目指す考え方である
- 2014年にギャビン・ウッド氏が提唱し、サイファーパンクやビットコインの思想的な系譜を受け継いでいる
- 分散構造・改ざんの難しさ・透明性という3つの技術的な特徴に支えられている
- NFTはブーム後に実用面へ、DeFiやステーブルコインは決済インフラとして実装が進んでいる
- 個人による管理という利点がある一方、自己責任の重さや普及の遅れといった課題も残る
- 国内では税制改正など、暗号資産を金融資産として位置づける制度整備が進んでいる
※1 出典:日本ブロックチェーン協会「暗号資産に関する税制改正要望」(2025年7月18日公表) ※2 出典:与党税制改正大綱「令和8年度税制改正大綱」(2025年12月19日公表、同月26日閣議決定) ※3 出典:総務省「令和6年版情報通信白書」掲載、A.T.カーニー社によるWeb3世界市場規模予測(2021年を基準とした2027年までの予測)