「海外の取引所を使えばばれない」「少額なら見逃される」と考えて、暗号資産(仮想通貨)の確定申告を後回しにしていないでしょうか。暗号資産の取引は、交換業者からの情報提供や国際的な情報交換の仕組みを通じて、税務署に把握されやすい状況にあります。この記事では、なぜ「ばれない」が通用しないのかという仕組みの理解から、申告漏れが発覚した場合のペナルティ、そして合法的にできる節税方法までをまとめて解説します。
執筆:CoinTradeコラム編集部
※本記事は2026年9月3日時点の情報であり、今後の法改正等により相違が生じることがあります。個別の税務判断については、税理士や所轄の税務署へご確認ください。
暗号資産の税金に抜け道がない理由
多くの経路から税務署に把握されうる仕組みになっているため、暗号資産の税金に抜け道はありません。ここでは、その具体的な仕組みを一つずつ確認します。
令和8年度税制改正で決まった報告制度
令和8年3月31日に成立・公布された「所得税法等の一部を改正する法律」により、暗号資産取引業者には、利用者の取引内容を記載した「特定暗号資産年間取引報告書」の税務署への提出が新たに義務付けられました。
適用開始日は、前提となる金融商品取引法の改正(令和8年7月15日成立)の施行日の翌年1月1日で、2028年1月1日からの適用が見込まれる状況です。
また、この新制度を待たなくても、暗号資産交換業者は口座開設時に本人確認を行っており、顧客ごとの取引履歴を保有しています。
現行の制度でも税務署が交換業者に取引履歴の提出を求めることはできるため、これが申告漏れの発覚経路の一つです。
ブロックチェーン上に残る取引記録
ビットコインをはじめとする多くの暗号資産は、取引の記録がブロックチェーン上に刻まれる仕組みを採用しています。
そのため、ウォレットアドレス自体は匿名だったとしても、交換業者への入出金を経由した時点で、その取引が本人確認情報と結び付けられる可能性があります。
ブロックチェーンに一度記録された取引は改ざんや削除ができないため、後になってから取引そのものをなかったことにはできません。
CARF(暗号資産等報告枠組み)による国際的な口座情報の交換
CARF(暗号資産等報告枠組み)は、OECDが策定した、暗号資産の口座情報を各国の税務当局間で自動的に交換するための国際的な枠組みです。
日本では、この枠組みに対応するための実特法にもとづく制度が令和8年(2026年)1月1日に施行されました。
具体的には、非居住者に関する取引情報を対象に、交換業者が顧客の税務上の居住地国などを確認・届出させる仕組みが始まっています。
そして、2026年分の取引情報をもとに、2027年からは各国の税務当局間で自動的な情報交換が始まる見込みです。
この制度の詳しい仕組みは、CARFについての解説ページをご確認ください。
国税庁の実地調査・追徴課税の実績
国税庁が公表した令和6事務年度(令和6年7月から令和7年6月まで)の資料によると、暗号資産等取引を行っている個人に対する実地調査は613件にのぼり、前年度の535件から14.6%増加しました。
このうち申告漏れ等があった件数は575件で、調査に着手された場合の非違割合はおよそ93.8%に達しています。
申告漏れ所得金額の総額は156億円(前年度126億円)、追徴税額の総額は46億円(前年度35億円、31.4%増)でした。
国税庁の令和6事務年度のデータでは、暗号資産等取引を行っている個人への実地調査に着手された場合、9割超で申告漏れが指摘されています。1件当たりの追徴税額も、所得税の実地調査全体の平均の2.5倍にのぼります。
申告漏れ・無申告が発覚した場合のペナルティ
暗号資産の申告漏れが発覚した場合、本来の税額に上乗せされるペナルティにはいくつかの種類があります。ここでは代表的な4つを確認します。
無申告加算税
無申告加算税は、期限内に確定申告をしなかった場合に課される加算税です。
令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税からは、納付すべき税額のうち300万円を超える部分について30%の税率が新設されました。
300万円以下の部分は、納付税額に応じて15%または20%です。
一方、税務署からの調査通知が届く前に自主的に期限後申告をした場合は、税率が5%に軽減されます。
重加算税
重加算税は、所得の隠蔽や仮装など悪質性が高いと認定された場合に課される、加算税の中でも最も重いものです。
過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%の税率が適用されます。
また、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがある場合は、税率がさらに10%加重されます。
延滞税
延滞税は、納付が遅れた期間に応じて課される、利息に相当する税金です。
令和8年分の延滞税は、納期限の翌日から2か月を経過する日までは年2.8%、それ以降は年9.1%です。
滞納の期間が長引くほど負担が増えるため、早めの対応が重要です。
刑事罰に発展するケース
意図的に所得を隠すなど悪質性が高いと判断された場合、加算税だけでなく刑事罰(懲役・罰金)の対象になることもあります。
国税庁が公表する令和6事務年度の調査事例集でも、名義を偽装して無申告を続けていた個人事業者に重加算税を課した事例のように、悪質性の高い無申告が実際に摘発されています。
この事例では、申告漏れの所得金額が約1億1,800万円にのぼりました。
| ペナルティ | 主な発生条件 | 税率の |
|---|---|---|
| 無申告加算税 | 期限内に |
15%〜30%(300万円超部分は |
| 重加算税 | 隠蔽 |
過少申告35%、無申告40% |
| 延滞税 | 納付が |
2か月以内2.8%、それ以降9.1%(令和8年分) |
※過去5年以内に無申告加算税・重加算税を課されたことがある場合、重加算税はさらに10%加重されます。
そもそも暗号資産の税制はどういう仕組みか
ここまで発覚の仕組みを見てきましたが、そもそも暗号資産の利益にはどのような税金がかかるのでしょうか。基本的な仕組みを整理します。
雑所得として総合課税される
暗号資産取引で得た利益は、原則として雑所得(その他雑所得)に区分されます。
具体的には、給与など他の所得と合算した総合課税の対象となり、所得税は5%から45%の累進税率に、住民税10%が加わります。
課税される主なタイミング
暗号資産の取引では、次のようなタイミングで所得が生じます。
- 暗号資産を売却(円転)したとき
- 暗号資産を商品やサービスの決済に使ったとき
- 保有する暗号資産を他の暗号資産と交換したとき
- マイニングやステーキング、レンディングなどにより新たに暗号資産を取得したとき
これらはいずれも、暗号資産を保有しているだけでは課税されず、売却や交換、決済といった具体的な行為があって初めて所得として認識される点で共通しています。
20万円ルールと確定申告の要否
給与を1か所から受けて年末調整を受けている会社員は、給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。
この「20万円」は、暗号資産を売った金額そのものではなく、必要経費を差し引いた後の利益で判定されます。
また、20万円以下で所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別途必要です。
個人事業主や、2か所以上から給与を受けている場合、給与収入が2,000万円を超える場合は、この20万円ルール自体が適用されません。
違法な抜け道ではなく、合法的にできる節税方法
ここまで見てきた発覚の仕組みを踏まえると、目指すべきは抜け道ではなく、税法で認められた範囲での対策です。暗号資産の税負担を適法に抑える方法を3つ紹介します。
必要経費を計上する
暗号資産の利益を計算するときは、譲渡原価(取得価額)に加えて、売却時に交換業者へ支払った手数料も必要経費の対象です。
インターネットの回線利用料やパソコンの購入費用なども、暗号資産取引のために直接必要な支出と認められる部分に限り、必要経費として計上できます。
雑所得内で損益を通算する
暗号資産取引で損失が出た場合、同じ年に生じた暗号資産同士の利益や、公的年金等ほかの雑所得の利益とであれば、雑所得内での通算(内部通算)が可能です。
ただし、給与所得や株式等の譲渡所得など、他の所得区分との通算はできないことには注意してください。
| 組み合わせ | 通算の |
|---|---|
| 暗号資産の |
で |
| 暗号資産の |
で |
| 暗号資産の |
で |
※不動産所得・事業所得・山林所得・譲渡所得の間で認められる正式な「損益通算」とは異なる仕組みです。
法人化を検討する(大口の場合)
個人の所得税は最大45%(住民税と合わせて最大55%程度)の累進課税ですが、法人税の実効税率はおおむね30%前後です。
そのため、利益の規模が大きくなるほど、個人よりも法人のほうが税負担を抑えられる可能性があります。
具体的な損益分岐点や制度活用の可否は個々の状況によって異なるため、法人化を検討する際は税理士へ相談することをおすすめします。
正しく申告するための準備
最後に、正しく申告するために日頃から準備しておきたいことを紹介します。
暗号資産交換業者が発行する年間取引報告書を活用する
暗号資産交換業者は、国税庁の要請にもとづき、顧客に対して年間の購入・売却数量や金額をまとめた「年間取引報告書」を交付しています。
この報告書の記載内容を、国税庁が公開している暗号資産の計算書に入力すれば、譲渡原価や所得金額を簡便に計算できます。
暗号資産交換業者の取引履歴で損益を整理する
複数の暗号資産交換業者を利用している場合は、各社が発行する年間取引報告書をそれぞれ入手し、取引履歴を一つにまとめておく必要があります。
取得価額の計算方法には総平均法と移動平均法があり、暗号資産の種類ごとに選べますが、初めて取得した年の確定申告期限までに届出書を提出しなければ総平均法が自動的に適用される決まりです。
不安な場合は税理士に相談する
取引量が多い、複数年にわたり未申告があるなど複雑なケースでは、早めに税理士へ相談することで、自主的な期限後申告による無申告加算税の軽減など、負担を抑えられる可能性があります。
相談の際は、暗号資産交換業者から取得した年間取引報告書や取引履歴を用意しておくと、スムーズに進むでしょう。
-
1
年間取引報告書を入手する
利用している暗号資産交換業者から、年間の購入・売却数量や金額をまとめた報告書を取得する。
-
2
計算書やツールに入力する
国税庁の「暗号資産の計算書」や損益計算ツールに取引履歴を入力し、所得金額を算出する。
-
3
不安があれば税理士に相談する
取引が複雑な場合や未申告の期間がある場合は、早めに税理士へ相談する。
よくある質問
Q海外の取引所を使えば税金はばれませんか?
ばれないとは言えません。CARF(暗号資産等報告枠組み)にもとづき、令和8年1月からは非居住者向けの口座情報を各国の税務当局間で自動的に交換する仕組みが始まっています。海外の取引所を利用していても、情報が共有される可能性があります。
Q暗号資産の税金を申告しないとどうなりますか?
無申告加算税や延滞税が課され、隠蔽や仮装があったと認定されれば、より重い重加算税や刑事罰の対象になることもあります。国税庁の令和6事務年度の実地調査では、着手件数の9割超で申告漏れが指摘されています。
Q暗号資産の税金はいくらから申告が必要ですか?
給与を1か所から受けて年末調整を受けている会社員の場合、暗号資産の利益を含む給与以外の所得の合計が年間20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。20万円以下でも住民税の申告は別途必要です。
Q暗号資産で合法的にできる節税方法はありますか?
必要経費の計上、雑所得内での損益通算、大口の場合の法人化の検討などがあります。いずれも税法で認められた範囲の対策であり、具体的な適用可否は個々の状況によって異なります。
QCARFが始まると何が変わりますか?
非居住者に関する暗号資産の口座情報が、2027年から各国の税務当局間で自動的に交換されるようになります。海外の取引所を使っていても、税務上の居住地国などの情報が国境を越えて把握される仕組みが整いつつあります。
まとめ
- 暗号資産の税金に違法な抜け道は存在せず、交換業者が保有する情報や税務調査での照会、CARFによる国際的な情報交換を通じて申告漏れは把握されうる
- 令和8年3月に成立した税制改正法により、暗号資産取引業者に利用者の取引内容の報告書提出を義務付ける制度が決まっており、令和10年1月1日からの適用が見込まれるなど、把握の網は今後さらに強化される見込み
- 国税庁の令和6事務年度の実地調査では、着手件数の9割超で申告漏れが指摘され、1件当たりの追徴税額は所得税実地調査全体平均の2.5倍
- 無申告・申告漏れが発覚すると、無申告加算税・重加算税・延滞税に加え、悪質な場合は刑事罰の対象にもなり得る
- 暗号資産の損失は雑所得内でのみ通算でき、給与所得など他の所得区分とは通算できない
- 年間取引報告書の活用や税理士への相談など、日頃からの準備が正しい申告への近道