暗号資産(仮想通貨)の利益が20万円以下でも、住民税の申告は別途必要になる場合があります。ただ、多くの方が本当に気にしているのは、手続きそのものより「会社に知られたくない」という点ではないでしょうか。本記事では、住民税の申告から会社に副収入が伝わってしまう仕組みと、それを避けるための確定申告書の書き方、確定申告をしない場合の住民税の申告手続きまで解説します。
執筆:CoinTradeコラム編集部
※本記事は2026年9月4日時点の情報であり、今後の法改正等により相違が生じることがあります。個別の税務判断については、税理士や所轄の市区町村・税務署へご確認ください。
住民税の申告、20万円以下でも必要な理由
暗号資産の利益と税金について調べると、必ず登場するのが「利益が20万円以下なら申告は不要」という20万円ルールです。ただ、このルールが対象にしているのは所得税だけで、住民税には別の申告義務が存在します。
所得税の「20万円ルール」と住民税は別の制度
給与所得者が確定申告を省略できる20万円ルールは、所得税に関する制度であり、地方税である住民税には適用されません。
税務署に所得税の確定申告書を提出した人は住民税の申告が原則不要になりますが、20万円以下を理由に所得税の確定申告をしなかった人には、住民税の申告義務が別途残ります。
このように、暗号資産の利益(雑所得)が1円でもあれば、原則としてお住まいの市区町村に住民税の申告が必要になる点は、覚えておいてください。
住民税の申告が会社にバレる仕組み
住民税の申告が「会社にバレる」と言われる背景には、給与から住民税が天引きされる仕組みが関係しています。ここでは、その具体的な流れを確認します。
特別徴収の仕組み|給与から住民税が天引きされる理由
所得税を源泉徴収している会社は、原則として全従業員の住民税を「特別徴収」の方法で徴収する義務を負います。
特別徴収とは、会社が毎月の給与から住民税を天引きし、従業員に代わって市区町村に納入する制度です。
市区町村は毎年5月ごろ、会社宛てに「特別徴収税額決定通知書」を送付し、6月から翌年5月までの年税額・月割税額を通知します。
この通知書に記載される税額は、給与所得分だけでなく、住民税の申告に含めた暗号資産の利益分も合算して計算されています。
会社が気づくタイミング
特別徴収税額決定通知書には従業員ごとの年税額・月割税額が記載されているため、経理担当者は前年と比べて税額が大きく変動した従業員に気づきやすいです。
具体的には、給与額に変化がないにもかかわらず住民税額だけが上昇していると、給与以外の所得があるのではと推測されるきっかけになりえます。
ただ、通知書の税額は合算後の金額であり、内訳(給与分・給与以外の分)までは記載されないため、経理担当者にとっても推測の域を出ません。
この仕組みが、暗号資産の利益で住民税が上がったことで、会社に副収入を勘づかれる主な理由の一つです。
| 項目 | 特別徴収 | 普通徴収 |
|---|---|---|
| 徴収方法 | 会社が |
納付書や |
| 通知の |
会社に |
自宅に |
| 対象に |
給与所得(原則すべて) | 給与以外の |
※給与所得分の住民税は原則として特別徴収のままで、普通徴収を選べるのは給与以外の所得分に限られます。
会社にバレないための対策|確定申告書「第二表」の書き方
確定申告書の書き方次第で、給与以外の所得にかかる住民税を、会社を経由しない方法で納めることができます。
「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ具体的な手順
確定申告書第二表には「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」という欄があり、ここで「自分で納付」を選ぶと、給与所得以外の所得にかかる住民税分だけを普通徴収に分けられます。
給与所得分の住民税は、従来どおり特別徴収のままです。
何も丸をつけずに提出した場合は、原則としてすべて特別徴収の扱いになる点には注意してください。
-
1
第二表を確認する
確定申告書の第二表を用意する。
-
2
「住民税・事業税に関する事項」欄を探す
第二表の中にある該当欄を見つける。
-
3
「自分で納付」に丸をつける
「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄で「自分で納付」を選ぶ。
-
4
そのまま提出する
通常の確定申告書と同じ方法で税務署に提出する。
e-Taxで申告する場合の選択方法
e-Tax(国税庁の確定申告書等作成コーナー)で申告する場合も、「給与・公的年金等に係る所得以外の所得がある方」向けに、住民税の徴収方法を選ぶ入力項目が用意されています。
該当する画面で「特別徴収(給与から天引き)」または「自分で納付」のいずれかを選ぶ流れです。
選択の考え方は紙の申告書と同じで、給与以外の所得分だけが普通徴収に分けられます。
画面の具体的なレイアウトは年度によって変わることがあるため、申告時は国税庁の確定申告書等作成コーナーの画面案内に従ってください。
確定申告をしない場合の住民税申告の手続き
暗号資産の利益が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合は、住民税の申告だけを別途行う必要があります。
住民税申告書の入手方法・提出先
所得税の確定申告をしない人は、別途お住まいの市区町村に住民税の申告書を提出する必要があります。
申告書は各市区町村の税務担当窓口やウェブサイトで入手でき、提出先はその年の1月1日時点で住民票のある市区町村の担当課です。
窓口の名称は自治体によって異なり、例えば世田谷区では区役所の課税課が担当しています。
自治体によっては、郵送やeLTAX(地方税ポータルシステム)による電子申告にも対応しているので、ご確認ください。
申告期限と必要書類
住民税の申告期限は原則として3月15日で、15日が土日祝日にあたる場合は翌開庁日になります。
期限を過ぎても申告自体は可能ですが、延滞金の対象になりうるため、期限内の提出を心がけましょう。
必要書類の詳細は自治体ごとに案内が異なるため、暗号資産の損益計算書や本人確認書類などを事前にお住まいの市区町村のウェブサイトで確認しておくと安心です。
よくある質問
Q住民税の申告は確定申告と同時にできますか?
所得税の確定申告書を税務署に提出すると、その内容は自治体にも共有されるため、住民税の申告は原則不要になります。所得税の確定申告をしない場合は、住民税の申告だけを別途、お住まいの市区町村へ提出する必要があります。
Q住民税の申告を忘れていた場合、さかのぼって申告できますか?
申告期限を過ぎていても、住民税の申告は可能です。ただし、期限後の申告になるため延滞金が発生する場合があります。心当たりがある場合は、早めにお住まいの市区町村の窓口に相談してください。
Qふるさと納税をしている場合、普通徴収を選ぶと何か影響はありますか?
ふるさと納税による住民税の控除は、給与所得に対する特別徴収の税額から適用されるのが一般的で、給与以外の所得分だけを普通徴収に分けても、通常はふるさと納税の控除自体に影響しません。ただし、細かい条件によって扱いが変わる場合があるため、不安な場合はお住まいの市区町村に確認しましょう。
Q学生や扶養に入っている場合も、この記事の対策は当てはまりますか?
給与所得がない学生や扶養に入っている方は、会社の特別徴収の対象外であるため、本記事で解説した「会社にバレる仕組み」は基本的に当てはまりません。ただし、住民税の申告義務自体は暗号資産の利益に応じて生じるため、申告が必要かどうかはお住まいの市区町村に確認してください。
Q住民税の申告漏れは、国民健康保険料など他の制度にも影響しますか?
住民税の申告内容は、国民健康保険料の算定や、課税・非課税証明書の発行など、他の行政サービスの判定に使われる場合があります。申告漏れがあると、こうした判定に影響する可能性があるため、正確な申告を心がけましょう。
まとめ
- 暗号資産の利益が20万円以下でも、所得税とは別に住民税の申告義務が生じる
- 住民税は原則として給与から天引きされる特別徴収の対象となり、これが会社に副収入を知られる主な経路になる
- 確定申告書第二表で「自分で納付」を選択すれば、給与以外の所得分の住民税を普通徴収に分けられる
- e-Taxで申告する場合も、紙の申告書と同じ考え方で徴収方法を選択できる
- 確定申告をしない場合は、原則3月15日までに、お住まいの市区町村へ住民税の申告書を別途提出する必要がある