暗号資産(仮想通貨)の税負担が大きく変わろうとしています。令和8年度税制改正により、一定の条件を満たす暗号資産取引には株式と同様の申告分離課税(20.315%)が適用される見通しです。本記事では、新税制のポイントと今から準備できることをわかりやすく解説します。
執筆:CoinTradeコラム編集部
※本記事は2026年5月21日時点の情報であり、今後の法改正等により相違が生じることがあります。
暗号資産の税金、これまでの問題点
これまで日本では、暗号資産の売買で得た利益は「雑所得」として国税庁の定める総合課税の対象でした。総合課税とは、給与所得など他の所得と合算して税率を計算する方式です。
累進課税のため、所得が増えるほど税率が上がります。住民税と合算すると、最大で約55%もの税金がかかるケースがありました。株式やFXが一律20.315%の分離課税であるのと比べると、暗号資産の税負担は大きな差がありました。
| 項目 | 現行(暗号資産) | 株式・FX(参考) |
|---|---|---|
| 所得区分 | 雑所得 | 譲渡所得・先物雑所得 |
| 課税方式 | 総合課税(累進) | 申告分離課税(一律) |
| 最大税率 | 約55%(住民税含む) | 20.315% |
| 損失繰越 | 不可 | 3年間可 |
| 他商品との損益通算 | 不可 | 一定の範囲で可 |
この税負担の重さが、日本における暗号資産投資の普及を妨げる一因と指摘されてきました。
新税制では、総合課税ルートを選んだ場合に「三重の制限」が課される見込みです。具体的には、譲渡所得の特別控除・長期保有による税率優遇(1/2課税)・他の所得との損益通算が、いずれも適用されなくなります。これにより、分離課税が適用されない取引所や方法での売買は、現行より不利になる可能性があります。
分離課税とは何か?申告分離課税の仕組み
申告分離課税とは、特定の所得を他の所得と切り離し、一定の税率のみで課税する方式です。給与が高くても低くても、対象所得には同じ税率が適用されます。
令和8年度税制改正では、一定の条件を満たす暗号資産取引に申告分離課税を適用する方針が示されました。適用税率は株式と同水準の20.315%が見込まれています。
申告分離課税の税率20.315%の内訳は、所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%の合計です。現行の最大約55%と比べ、税負担が大幅に軽減される可能性があります。
この改正は単なる減税にとどまりません。暗号資産が「資金決済法上の決済手段」から「金融商品取引法上の金融商品」へと位置づけ直される、大きな制度変更と連動しています。
新税制の主なポイント4つ
対象となる「特定暗号資産」とは
分離課税が適用されるのは、すべての暗号資産ではありません。金融庁が定める「暗号資産取引業者(現行の暗号資産交換業者から名称変更予定)」として登録された事業者を通じて取引された「特定暗号資産」の現物取引が対象です。
分散型取引所(DEX)や海外の無登録取引所での取引、またDeFiトークン・NFTなどが「特定暗号資産」に含まれるかは、今後の法令整備次第とされています。全ての暗号資産が一律20%になるわけではない点に注意が必要です。
損失の3年間繰越控除が新設
新税制では、取引で損失が出た場合に翌年以降3年間、利益と相殺できる「損失の繰越控除」が導入される見通しです。これは株式投資にある仕組みと同様です。
たとえば、ある年に50万円の損失が出た場合、翌年の利益50万円と相殺でき、その年の税金をゼロにすることができます。ただし、損益通算できる範囲は「特定暗号資産の現物取引の中のみ」とされており、株式や他の金融商品との通算はできない見込みです。
ステーキング・レンディング報酬の扱い
ステーキングやレンディングによって得た報酬については、現時点の改正内容では分離課税の対象外とされています。引き続き雑所得として総合課税が適用される見通しです。
ステーキング報酬・レンディング収益は、現行と同様に総合課税(雑所得)のまま継続となる見通しです。「暗号資産の税金が全て20%になる」という理解は誤りですのでご注意ください。今後の法令整備で変更となる可能性もあり、最新情報の確認をおすすめします。
経路選択:どこで売るかで課税方式が変わる
新税制の重要な特徴として、「経路選択」という考え方があります。同じ暗号資産でも、どの取引所(経路)で売却するかによって課税方式が変わる仕組みです。
国内の暗号資産取引業者(現行の暗号資産交換業者から名称変更予定)を経由して売却した場合は分離課税(20.315%)が適用される見通しです。一方、DEXや海外の無登録取引所を経由した場合は総合課税ルートとなり、かつ前述の「三重の制限」も適用される可能性があります。
分離課税の恩恵を受けるには、暗号資産取引業者として登録された国内事業者を通じて売却することが前提となる見通しです。取引所の選択が、そのまま税負担の大きさに直結します。なお、経路選択の詳細な適用範囲は今後の法令整備で確定するため、最新情報を継続的に確認することが重要です。
年間取引報告書の義務化と税務把握の強化
新税制では、取引業者から税務署への「年間取引報告書」の提出が義務化される予定です。これは株式取引の特定口座年間取引報告書と同様の仕組みで、取引内容が税務署に自動的に報告されます。
ただし、年間取引報告書の義務化は分離課税の施行と同時ではなく、施行から1年遅れて適用される見込みです。暗号資産取引業者側の管理体制を整備するための猶予期間とされています。
報告義務が始まれば、申告漏れは以前より把握されやすくなります。2028年の施行前から、正確な損益計算と申告の習慣を整えておくことが重要です。
いつから適用?施行スケジュール
改正所得税法は2026年3月31日に成立・公布されました。ただし、分離課税の適用開始日は「金融商品取引法改正の施行日が属する年の翌年1月1日」と規定されています。
金商法の改正案が2026年中に成立し、2027年に施行された場合、分離課税は2028年1月1日以降の取引から適用される見通しです。まだ確定ではないため、今後の動向に注目が必要です。
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1
令和8年度税制改正大綱の公表(2025年12月)
暗号資産の申告分離課税化の方針が決定。
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2
改正所得税法の成立・公布(2026年3月31日)
法案が国会で成立。分離課税の制度的な根拠が整備される。
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3
金融商品取引法(金商法)の改正・施行(2027年見通し)
暗号資産が金融商品として正式に位置づけられる。
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4
分離課税の適用開始(2028年1月1日見通し)
特定暗号資産の現物取引に20.315%の申告分離課税が適用される。
新税制に向けて今から準備できること
2028年の施行まで時間はありますが、今から備えておくことで確定申告の手間を減らし、繰越控除などの恩恵を最大限に受けやすくなります。
まず重要なのは、暗号資産取引業者として登録された国内事業者で口座を持つことです。分離課税の対象となるのは、登録事業者を経由した取引に限られる見通しです。現行の暗号資産交換業者は金商法改正後に「暗号資産取引業者」へ名称変更となる予定ですが、改めて登録申請が必要となるため、利用する取引所が登録を継続しているか確認することも重要です。現行の暗号資産交換業者登録一覧は金融庁サイトで確認できます。CoinTradeは現在、金融庁登録済みの暗号資産交換業者(関東財務局長00025号)です。
次に、全ての取引記録を正確に保管することが欠かせません。損失の繰越控除を利用するには、損失が出た年に確定申告を行う必要があります。取引履歴のエクスポートや帳簿管理を今のうちに習慣化しておきましょう。確定申告の具体的なやり方はこちらのガイドもご参照ください。
また、株式と異なり、暗号資産の分離課税には源泉徴収制度・特定口座制度が設けられない見通しです。利益が出た年は必ず自分で確定申告を行う必要があります。この点は株式投資との大きな違いですので、注意しておきましょう。
また、現行制度でも一定の利益がある場合は確定申告が必要です。2028年以前の取引は従来どおり総合課税で申告する必要があります。申告漏れのないよう、毎年の損益計算をしっかり行いましょう。
ステーキングやレンディングにも関心がある方は、ステーキングの税金ガイドもあわせてご覧ください。報酬の計算・申告方法を詳しく解説しています。
よくある質問
Q分離課税は2028年より前の取引にも遡って適用されますか?
いいえ、遡及適用はありません。分離課税は金融商品取引法改正の施行日以降の取引から適用される予定です。2028年1月1日以降の取引が対象となる見通しで、それ以前の取引は従来どおり総合課税(雑所得)として申告する必要があります。
Q海外の取引所で売買した場合も分離課税になりますか?
現状の法案では、分離課税の対象となるのは「暗号資産取引業者(現行の暗号資産交換業者から名称変更予定)」として登録された事業者を経由した取引とされています。海外取引所や分散型取引所(DEX)での取引は対象外となる可能性が高く、引き続き総合課税が適用される見込みです。
Qステーキング報酬やレンディング収益も20%になりますか?
現時点の改正内容では、ステーキング報酬やレンディング収益は分離課税の対象外とされており、引き続き雑所得として総合課税が適用される見通しです。ただし、今後の法令整備によって変更となる可能性もあるため、最新情報をご確認ください。
Q損失の繰越控除を使うには確定申告が必要ですか?
はい、損失の繰越控除を適用するには確定申告が必要です。損失が生じた年の申告を行わないと翌年以降の繰越ができないため、利益がない年でも申告することが重要です。取引記録をきちんと保管しておきましょう。
Q所得が少ない場合でも、分離課税の方が有利になりますか?
必ずしも有利とは限りません。現行の総合課税では所得が低いほど税率が低くなります。たとえば課税所得が195万円以下の場合、所得税率は5%であり、住民税を合わせても約15%程度です。この場合、分離課税の20.315%より現行税率の方が低くなるケースがあります。ご自身の所得状況をもとに、税理士などの専門家にご相談されることをおすすめします。
まとめ
- 現行の暗号資産課税は雑所得・総合課税(最大約55%)で、株式やFXと比べて税負担が重かった。
- 令和8年度税制改正により、特定暗号資産の現物取引に申告分離課税(20.315%)が適用される見通し。
- 損失の3年間繰越控除も新設される予定で、損失年も確定申告を行う重要性が増す。
- 分離課税は「どの取引所で売るか(経路選択)」で決まる仕組みのため、暗号資産取引業者(現行の暗号資産交換業者から名称変更予定)として登録された国内事業者の利用が前提となる見通し。
- ステーキング報酬・レンディング収益は現時点では雑所得(総合課税)のまま継続となる見通し。
- 年間取引報告書の義務化により申告漏れが把握されやすくなる。ただし施行から1年遅れての適用見込みのため、2028年施行前から自主的に取引記録の整備が重要。
- 暗号資産の分離課税には源泉徴収・特定口座制度が設けられない見通しのため、株式と異なり利益が出た年は必ず自分で確定申告が必要。
- 所得が低い方は分離課税で逆に税率が上がるケースもあるため、個別の確認を推奨。
※1 2026年5月21日現在。年率は変動する場合があります。最新情報はCoinTrade Stakeのサービスページをご確認ください。