第6回 イーサリアム王国を支える暗号資産たち
「暗号資産?よくわかんないけど怖い」
「なんか難しそう……」
そんな印象を持っている方も、まだまだたくさんいると思います。
この連載では、暗号資産企業に勤める『中の人』がお客様の目線で「暗号資産の投資体験」をしながら、改めて疑問や不安と向き合い、解消していくことを目指します。
前回はイーサリアムの「幅広さ」やレイヤー2が抱える課題についてお話ししました。今回は、そんなイーサリアム王国の弱点を補う「サポート部隊」の役割を持った暗号資産を紹介していきます!
1. 楽観的に信じる「はやい・安い」の味方
まず紹介するのは、イーサリアムの「レイヤー2(メインのブロックチェーンを補助する外付けのネットワーク)」を担う代表格、OP(オプティミズム)です。
オプティミズムは、「オプティミスティック(楽観的)・ロールアップ」というユニークな技術で「はやい」「安い」を叶えています。その仕組みは大きく4つの要素で成り立っています。
- 楽観的に信じる:基本的に「レイヤー2で行われた取引はすべて正しいだろう」と楽観的に信じて処理を進めます。
- 取引をまとめて処理:メインの作業机(イーサリアム)がいっぱいなので、隣のサブデスク(オプティミズム)で効率よく取引をまとめます。
- 結果だけを報告:サブデスクで処理した「結果の要約」だけをメインの机に報告することで、イーサリアムの負担を劇的に減らします。
- チャレンジ期間:もし「この取引はおかしいぞ!」と誰かが気づいた場合、一定期間内なら異議を申し立て(検証)が可能です。
この仕組みにより、イーサリアムの強力なセキュリティを借りつつ、高速かつ格安な取引を実現しています。
現在オプティミズムが目指しているのは、バラバラに建っている複数のレイヤー2(別館)を地下通路で繋ぎ、「ひとつの超巨大なショッピングモール」にしてしまおうという構想です(別館同士の移動が面倒になる「タコツボ化」の解消が狙いです)。
そのために彼らは「OP Stack」という、自分たちの技術をレゴブロックのように組み立てられる設計図を無償で配っています。世界中に同じ系列店(チェーン)を増やし、世界の共通規格になることがオプティミズムの目指すゴールです。
2. 圧倒的な技術力の職人肌
次に紹介するのは、オプティミズム最大のライバルであるARB(アービトラム)です。
アービトラムも同じく「オプティミスティック・ロールアップ」を採用するレイヤー2ですが、こちらは共通規格を目指すよりも「自分たちを最強の単独店舗にする」という戦略をとっています。その高い技術力から、特に金融サービスである「DeFi(分散型金融)」の分野では、他の追随を許さない圧倒的なシェア(預けられている資産の量)を誇っています。
実は、誕生当初はオプティミズムとの間に【不正の検証方式】で明確な違いがありました👇
- オプティミズム(当初):不正報告が入ったら、店長(イーサリアム)が電卓を取り出して1から10まで全部計算し直す方式(店長の負担大)。
- アービトラム(職人技):店長はいきなり計算せず、部下たちに「どこで計算が食い違ったか裏で話し合って」と指示。意見が割れた“最後の1マス”だけを店長が計算する方式(店長の負担小)。
※現在はオプティミズムも進化し、アービトラムに近い方式を取り入れています
さらにアービトラムは、独自のカスタマイズチェーンを簡単に作れるツール「Arbitrum Orbit」を提供しています。
これの面白いところは、レイヤー2の上にさらに「レイヤー3(L3)」という超高速・超格安のネットワークを作れる点です。L3はゲームなどに特化しており、ガス代(手数料)に使う通貨を自分たちで自由に決められるのが特徴です。ネットワークを共通化したいオプティミズムに対し、自分たちの経済圏を最強にして一番使われる場所にしたい、というのがアービトラムのゴールです。
3. 暗号数学で世界の境界線を消す
最後に紹介するのは、日本でもお馴染みのPOL(ポリゴン)です。以前は「MATIC(マティック)」という名前でしたが、新たな構想に向けてリブランディングされました。
ポリゴンはかつて「安くて速い1本の巨大なバイパス道路」でしたが、現在は「色々な用途の道路(チェーン)をたくさん作り、それらを全部繋げて巨大な経済圏を作ろう」という構想へシフトしています。
ポリゴンの特徴的なキーワードは「AggLayer(アグレイヤー)」です。
これは、乱立するレイヤー2という島国同士を、まるで1つの巨大な大陸のように繋ぎ合わせる「魔法の接着剤」のような技術です。通常、あるL2から別のL2へ資金を移動させるには、「ブリッジ」という専用の船に乗り、高い手数料を払い、時には数十分も待つ必要があり、ユーザーの大きなストレスになっていました。
AggLayerは、裏側に「ゼロ知識証明(絶対に嘘がつけない高度な暗号数学)」を使った共通の地下トンネルを掘ることで、ユーザーが「今どのチェーンにいるか」を一切気にせず、瞬時に資金を移動できるようにします。
「これってオプティミズムのスーパーチェーンと同じじゃない?」と思った方、大正解です!ただし、思想がまったく異なります。
| 比較項目 | スーパーチェーン(OP) | アグレイヤー(POL) |
|---|---|---|
| 参加条件 | 身内限定: 同じ設計図(OP Stack)で作られたチェーンのみ。 |
誰でもOK: 設計や規格が違う異なるチェーンも巻き込める。 |
| アプローチ | 同じルール(法律)に従うことで安全に繋ぐ。 | ルールではなく、「絶対に嘘のつけない暗号数学」で繋ぐ。 |
| 難易度 | 構築が比較的シンプルで安全。 | 異なるものを統合するため、技術的難易度が非常に高い。 |
ポリゴン陣営は、「人間やルールは信じない。数学だけを信じる」という、ブロックチェーンの原点のような純粋な思想を持っています。だからこそ、過去の技術(zkEVM)の廃止を受け入れてでもこのAggLayerに全てを賭け、「ブロックチェーンの境界線を消し去ること」を目指しているのです。